
年齢を理由に、自分の可能性をあきらめたり、人を決めつけてしまったことはありませんか?
「誰もが年齢に縛られず、自分らしく生きられる社会を」
そんな想いのもと、この授業を届けているのが株式会社LIFULLの吉岡さんです。今回は、この出前授業に込める想いや取り組みついてお話をうかがいました。
年齢にとらわれず、誰もが自分らしく生きられる社会へ
ー はじめに、御社の事業内容についてご紹介いただけますか?
不動産情報サービス事業や介護施設検索サイトの運営、地方創生など、事業を通じて社会課題解決に取り組むソーシャルエンタープライズです。
ー どのような出前授業を提供されていますか。
年齢から考える多様性 ~エイジズムについて考えよう~
国連でも向き合うべきテーマとして掲げられている「エイジズム(年齢にまつわる偏見や差別)」にフォーカスし、身の回りにある年齢に関する固定観念や差別に気づき、自分らしい生き方について考えていくワークショップ型の授業です。
ー 具体的な内容や特長などについて、もう少し詳しく教えていただけますか?
日本では「エイジズム」という言葉自体の認知がまだ低く、約8割の人が知らない現状(LIFULLによるエイジズムに関する調査結果)があります。そこでまずは、自分たちの身の回りに蔓延するエイジズムについて、スライドや動画教材から知り学び、理解を深めます。
「年齢」というラベルにとらわれて自分の可能性を諦めたり、周りの人や物事を年齢だけで判断したりしていないか、無意識のうちに抱いている年齢に関する価値観を見つめ直します。
その後のワークショップでは、自分自身の中にある「年齢」にまつわる価値観や思い込みを掘り下げたり、他の人との対話を通じて多様な視点に触れます。
日本人があまり考えることのない年齢について座学とワークショップで深く考えることで、子どもたちが自分らしく生きるためにどのようなことが必要か気づきやヒントが得られる構成にしています。
ー 御社が出前授業を始めたきっかけや背景を、ぜひお聞かせください。
2022年から、LIFULLでは出前授業を実施しています。
私たちは「あらゆる人が自分らしく生きられる社会」を実現するために、個人が抱える課題に光を当て、具体的なアクションを起こすことに取り組んできました。その中で、「年齢」というラベリングが、自分らしさを妨げる要因のひとつになっていると感じ、誰にとっても関係のある“年齢”や“老い”について考える機会を届けたいという想いから、この授業を作りました。
年齢は誰もが関係するテーマでありながら、その思い込みや偏見により自分らしく生きることを妨げている一つの要因だと捉えています。だからこそ、「年齢」について、多くの人と一緒に考え、対話をしていきたいと考えていました。
私は、エイジズム啓発アクションを実行するにあたり、戦略構築から企画、制作、実行まで一からつくりあげてきましたが、その施策の一つがこの出前授業です。
児童・生徒に向けて実施しているのは、大人になる前から身の回りの年齢にまつわる課題を知り、考えることが必要だと感じたからです。
子どもたちが自分の可能性を信じ、様々なチャレンジができるための、少しでも気づきの場となり、きっかけを提供できれば、という思いで取り組んでいます。

映像×対話で深める学び “年齢”に向き合うきっかけを子どもたちに
ー よりよい授業を届けるために大切にしていることや工夫があれば教えてください。
LIFULLオリジナルの動画コンテンツ「年齢の森」を活用し、子どもたちに考えてもらうことを大切にしています。
「年齢の森」は、10代から80代まで、生き方も価値観も異なる11人が“年齢”をテーマに対話したドキュメンタリー映像です。
自分たちの年齢とは異なる考えや想いに触れることで、テーマをより深く考え自分ごととして捉えやすくなると考えています。
その中で、自分自身で気づいたり、疑問を持ったり、興味を広げていけるよう工夫しています。
あまり話す機会のない「年齢」について、他人との共通点や違いを知り、自分も他人も認めることの大切さを体験できる授業にしたいと考えています。
ー 出前授業に携わることのやりがいや魅力は何ですか?
子どもたちのリアルな声、多彩な視点に触れながら、あらゆる人に関係する「エイジズム」という課題について、対話をしながら一緒に考えられることです。
ー 印象に残っている授業やエピソードがあれば、ぜひお聞かせください。
毎回の出前授業が印象的ですが、普段あまり考えない「年齢」というテーマに対して自分なりに考えたことや思ったことを言葉として伝えられるようになる姿に、いつも嬉しい驚きや発見があります。
また、とある学校でワークショップのあとに生徒が私の似顔絵を描いて持ってきてくれたことがありました。一生の宝物です。
先生からも「自分自身も年齢にとらわれて制限していたかも」「年齢を言い訳にするのはやめます」など、授業の感想とともにご自身のアクションを変える・見直すといった言葉をいただくこともあります。
授業を通して、子どもも大人も一緒に考え、変わっていくきっかけを持てていることを実感し、私自身の原動力にもなっています。
ー 吉岡さんにとって、出前授業はどのような存在ですか?
毎回の授業が私にとっても学びの場です。
子どもたちから、大人も考えないような意見が出てきたり、こんな捉え方もあるのだと気付かされるからです。
また、日本では「エイジズム」についての認知がまだ高くありませんが、授業を通じて一緒に考えることでき、少しずつ年齢に向き合う仲間が増えているような感覚もあります。
何かに困っていたり悩んでいたことが、出前授業を通して少し和らいだり考えるヒントになったり、自分らしくあるためのきっかけにできるようこれからも取り組んでいきます。

エイジズムをきっかけに、自分らしさを見つめ直す
ー 今後、出前授業をどのように続けていきたいとお考えですか?
子どもたちへの啓発のアクションを継続していく予定ですが、大人も「エイジズムや年齢の多様性」について学べるようにプログラムを開発し実施をはじめています。子どもから大人まで一緒にアクションをしてくれる仲間を増やし、共創できる場や機会をつくりたいと考えています。
ー 子どもたちに届けたいメッセージをお願いします。
たった一回の出前授業で何かが大きく変わるとは思いませんが、初めて考えるテーマに向き合った経験が今すぐではなくても、いつかみなさん自身の中でつながることがあるかもしれません。そのためにいろんな角度から問いかけをしています。みんなが一生懸命考えたくれた分、気づくこともあると思います。
世の中の誰かが言う「普通」に当てはまっていなきゃとか「みんなと同じじゃなきゃいけない」ということはないと思いますので、自分らしく生きるために色々なことに触れて、相手の立場になって、考えて、言葉にして、その体験や想いを学校や家庭で共有しあってほしいと思います。
ー 最後に、日々教育現場でご活躍されている先生方へ、何かひとこといただけたらと思います。
日本では「エイジズム」に対するアクションが多くないのが現状だと考えています。私たちLIFULLも出前授業をはじめ、有識者へのインタビュー、調査、コンテンツ発信など継続してアクションをしていますが、教育の現場でも考えるテーマの一つとしていかがでしょうか。年齢もエイジズムもあらゆる人に関係のある問題ですので、大人も子どもも関係なく対話する価値があると考えています。ぜひ私たちにお声がけください。

まとめ
年齢というテーマは、誰にとっても身近でありながら、普段じっくりと考える機会が少ないものです。
この授業は「年齢に縛られず、自分らしく生きる」ことの大切さを、子どもたち自身が対話と体験を通じて考える時間になっています。
その学びは、知識を得るだけではなく、自分や他者と向き合う姿勢を育むものでもあります。
固定観念や思い込みを手放すきっかけとして、「エイジズム」をテーマにした授業は、教育現場にとっても新たな価値をもたらしてくれるはずです。
吉岡さん、ありがとうございました!株式会社LIFULLの出前授業の詳細はこちらからご覧ください。