
家の中は、いちばん安心できる場所――そう思っていませんか? でも実は、家庭内で起きる事故は少なくありません。
「子どもたちが日常の中にある“危険”に気づき、自分で安全を守れるようになってほしい」
そんな想いのもと、出前授業を届けているのが株式会社LIXILの池田さんです。今回は、この出前授業に込める想いや取り組みついてお話をうかがいました。
日々の暮らしの中で育てる、安全への気づきと意識

ー はじめに、御社の事業内容についてご紹介いただけますか?
2011年に住宅関連会社(TOSTEM、INAX、サンウエーブ、新日軽、東洋エクステリア)の5社が統合し誕生した住宅設備メーカーです。
日本のものづくりの伝統を礎に、世界をリードする技術やイノベーションで、日々の暮らしの課題を解決するために、建材や設備機器の製造や販売、及び関連したサービスを幅広く展開しています。
世界150カ国以上で毎日10億人以上の人びとにLIXILの製品をご愛用いただいています。
ー どのような出前授業を提供されていますか。
安全教育PGM ~家の中の安全について考えよう!~
安全だと思われる家の中でも、多くの事故やケガが起きています。子どもたちが家の中や学校で安全に過ごすために、どんなところに危険があるかを具体的な事例を紹介しながら、どうすればケガや事故を防げるかを自ら考え、行動できるように生活安全リスクリテラシーの向上を目指しています。
※本授業は小学校低学年(1〜3年生)、高学年(4〜6年生)、中学生向けに、3つのプログラムに分けて実施しています。

ー 具体的な内容や特長などについて、もう少し詳しく教えていただけますか?
家の中にも思わぬキケンが潜んでいることに気づいてもらい、子どもたちが自分で対策を考えて、行動につなげていけるようになることを目指しています。そのため、小学校低学年・高学年・中学生と、学年ごとに授業を分けて展開しています。
これは、子どもたちが自分のこととして考えられるように、それぞれの発達段階に合わせて、学び方やアプローチに工夫をしているためです。
低学年向けでは、子どもに多い事故をテーマにして、アニメーション動画を使いながら「自分自身を守る」ことの大切さを伝えています。高学年になると、家の中で家族に起こりうる事故なども取り上げて、「自分と家族を守る」という視点まで広げています。
中学生には、製品開発者の視点も取り入れたグループワークを行っていて、事故防止の工夫を考える体験を通して、消費者と開発者の両方の視点に触れてもらえるようにしています。将来、ものづくりに関わる仕事を思い描くきっかけになれば、という思いも込めています。
授業の流れについては、小学生向けのものを例にお話しします。
動画を視聴しながら、クイズ形式で楽しく進めていきます。最初の導入では、交通事故と比較しながら、家の中にもたくさんの危険があるということを知ってもらいます。
そのあと、家の中で実際に起こりうる事故について、ドラマを見ながらわかりやすく学んでいきます。事故を知る、対策を考える、そしておさらいをする、という流れの中で、自分で考えながら自然と身につくように工夫しています。
さらに、学校内での事故や交通事故、自然災害など、家の中以外の事故にも応用できるように、防止対策の考え方もあわせて学んでもらっています。 授業の締めくくりでは、自分の行動が事故を防ぐことにつながるということを理解し、日々の生活の中で安全意識を持って行動してもらえるように働きかけています。
ー 御社が出前授業を始めたきっかけや背景を、ぜひお聞かせください。
住宅設備メーカーとして、日々安全な製品をお客さまに提供していますが、安全な住まいを実現するためには、消費者のみなさまにも正しい使用方法や経年劣化などによる事故リスクについてより多くの方に知っていただくことも重要だと考えています。
特に生活弱者や未来世代を担う子どもたちに多くの事故が起きている事を鑑み2013年より出前授業の活動をスタートさせました。
私が出前授業に携わるようになったのは2019年頃からです。
「家の中の事故を減らしたい。」との思いで出前授業を始めましたが、携わってすぐにコロナ禍に巻き込まれました。
学校現場もまずは感染対応が最優先という状況の中、授業を実施できる環境ではありませんでしたが、結果的には出前授業の在り方を見直す良い機会となりました。
もともと高学年向けの授業コンテンツ1種類のみを提供していましたが、非対面でのリモート授業教材の開発を皮切りに、実施対象学年を広げたり、安全に対する新たな気づきを与えるプログラムなどを開発し、現在では6種類のプログラムをご希望に応じ実施しています。
これらの出前授業による学びを通じて子どもたちが自ら安全に過ごせるようになってもらえればと願っています。
大人同士が手を取り合い、子どもたちの豊かな成長に寄り添う安全教育

ー よりよい授業を届けるために大切にしていることや工夫があれば教えてください。
この授業は、授業を受けて終わりではなく、子どもたちが自分の家に帰ってから、家の中の危険な場所をパトロールできるワークシートを用意しています。
後日ワークシートを講師に送っていただければ、それぞれに1枚ずつコメントを書き数週間後に子どもたちにお返しします。授業後のフォローとして、自然と授業の振り返りができる仕組みにしています。
先生からは、「児童がコメントを読んで授業を思い出し、クラスメイトと楽しそうに話していました」といったお話を伺うこともあります。
こうして安全についての学びがクラスの話題になることは、私たちにとってもとても嬉しいことです。また、ワークシートを通して、子どもたちがどのような学びを得たのかを知ることは、新たな気づきや、励ましにもつながっています。
ー 出前授業に携わることのやりがいや魅力は何ですか?
これからの未来を担う児童・生徒のみなさんと直接触れ合えることは、非常に貴重な機会だと感じていますし、子どもたちからたくさんの刺激をいただいています。
授業後に皆さんが色々な話をしてくれることも楽しみの一つです。
直接「ありがとう」や「勉強になった」と言ってもらえること、「おうちの人にも伝える」といった感想を聞くことができると、とても嬉しくやりがいを感じます。そして出前授業を通じて、児童のみなさんや保護者のみなさんがLIXILという会社を身近に感じていただけると光栄です。
ー 印象に残っている授業やエピソードがあれば、ぜひお聞かせください。

ある中学校に出前授業で伺った際に、生徒のみなさんが予め黒板にLIXILのロゴとメッセージを添えて出迎えてくれたことがあります…
その中学校には4つの小学校から生徒が入学してくるのですが、その4校すべてでLIXILの出前授業を実施していたこともあり、ほぼ全員が小学生時代にLIXILの出前授業を受けた経験がありました。
その子どもたちが中学校に入学し、先生からLIXILの出前授業の実施を告げられた際、それぞれ違う小学校出身の生徒たちが「自分も受けたことがある」と話題になり、クラスが盛り上がったと先生から伺いました。
LIXILのことを覚えていてくれて、さらに親しみを持ってくれていると感じ、非常に嬉しかったです。授業終了後の談話の中で先生から「ぜひ来年も授業をお願いしたい」とのご依頼もいただき、思い出深い出会いの一つとなりました。
ー 池田さんにとって、出前授業はどのような存在ですか?
私にとって出前授業とは、多くの方々とのコミュニケーションを生み出す貴重な機会となっています。
児童や生徒はもちろんのこと、先生方や保護者のみなさま、教材開発にご協力をいただいた大学の先生方、出前授業どっとこむのみなさまなど、様々な方々と出前授業を通じて出会うことができました。
こうした方々とともに未来世代を担うこどもたちの成長に寄与できることは私にとっても大きな財産となっています。
複数プログラムで安全リテラシーを育み、子どもたちに安心・安全な未来を

ー 今後、出前授業をどのように続けていきたいとお考えですか?
私たちの出前授業は、継続的に受講していただくことを推奨し、安全意識の定着を目指してます。
そのために学年別に分けたコンテンツを開発しました。
小学校6年間、ひいては中学校1-2年も含めた中での学校生活において、複数のコンテンツを受講していただくことで安全リテラシーの定着と向上に繋がればと考えています。
ー 子どもたちに届けたいメッセージをお願いします。
出前授業でお会いする児童のみなさんが、事故に遭ったり、さまざまなリスクに巻き込まれたりすることなく、安全に、そして楽しく豊かに日々を過ごし、健やかに成長してくれることを願っています。
また、成長の過程では、ぜひいろいろなことに主体的に挑戦し、多くの経験を積んでいってほしいです。
年をとっていくと、チャレンジできる選択肢はどんどん減ってしまいます。
やりたいことがあれば、今だからできることに無我夢中で飛び込んでみてください!
たとえ失敗しても、必死でチャレンジした経験や、その中で得た仲間は、かけがえのないものになり、みなさんを必ず成長させてくれるはずです。
この出前授業での経験が少しでも記憶に残り、将来キャリアを考えていく中で、身体の安全だけでなく、日常のさまざまなリスクにも目を向けながら、やりたいことに躊躇せずチャレンジし続け、安全で安心な輝かしい社会の実現を担う大人になっていただけたら嬉しく思います。
ー 最後に、日々教育現場でご活躍されている先生方へ、何かひとこといただけたらと思います。
LIXILでは多くのみなさんに出前授業を受けていただくことは大切なことと考えていますが、1回の受講で終わらせるのではなく、LIXILの複数の安全に関するプログラムを受講していただくことで、より安全教育の効果を高めることができると考えています。
そのために学年毎に受講いただけるプログラムを6種類ご用意しています。
小学5-6年生用のコンテンツでは、早稲田大学、静岡大学と共同で、従来の安全教育とは違った視点で気づきを与える内容で開発しました。また、各学校様の意向を反映してカスタマイズした授業の実施経験も数多くあります。
実施の際は、ぜひ担当者までご相談ください。
お申し込みをお待ちしております。
まとめ
家の中の安全について、子どもたち自身が考え、行動するきっかけをつくるLIXILの出前授業。
単に知識を伝えるのではなく、生活に根ざした気づきや、身近な人への思いやりの心を育む時間になっています。
授業後のワークシートや対話を通じて、子どもたちの中に“自分で守る力”が少しずつ芽生えていく。
この継続的な学びの積み重ねが、安心して暮らせる社会づくりの第一歩になるのかもしれません。
池田さん、ありがとうございました!
株式会社LIXILの出前授業の詳細はこちらからご覧ください。