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キャリア教育

なぜ企業がキャリア教育に参入するのか?メリットと注意点を解説

今、多くの企業がキャリア教育に参入しようとしています。
「なぜキャリア教育に一般の企業が携わるのか」
「キャリア教育に参入することで企業にどんなメリットがあるのか」
教員だけでなく、企業の担当者も分からないことがあるでしょう。

今回は、企業のキャリア教育参入について、注目される理由やメリット、注意点をお伝えしていきます。
最後には、企業によるキャリア教育の具体例を3つご紹介します。
企業が参加するキャリア教育を計画・実践するうえで、参考にしてみてください。

なぜキャリア教育に企業が参入するのか

キャリア教育という言葉が、世の中で初めて登場したのは、平成11年の中央教育審議会答申でした。
その後、平成18年に「キャリア教育等推進会議」が発足したことから、内閣府・文部科学省・厚生労働省・経済産業省が一丸となってキャリア教育を推進するようになりました。
とりわけ企業との関わりが大きい経済産業省の後押しは、キャリア教育の追い風となったと言えるでしょう。
経済産業省は企業におけるキャリア教育の意義として以下の3点を示しています。

就業への理解を促進させるため

近年、若者の早期離職が問題になっています。
原因として、職場や社会に出る前に、若者が自分のもつ能力や、社会との関わり、将来に対する目標を見失っているのではないかと考えられています。
キャリア教育によって、「働くことの意味」を見つめ、考えさせることは、若者一人一人が自分のキャリア構築(キャリア・オーナーシップ)をする上で重要となります。

実践的な力を備えた人材の育成のため

昔は、簡単な仕事から慣れていき、仕事の流れや業務の知識をゆっくりと獲得していくことができました。
しかし、現在はDX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)等に伴う産業構造の変化により、簡単な仕事は自動化され、入社した新人に求められることが、昔よりも高度なものになっています。
そのため、コミュニケーション能力や、積極的な態度など、即戦力になる人材をキャリア教育によって育成していこうとしています。

地場産業・地域工芸に対する理解を促進・継承するため

地場産業や地域工芸にとって、後継者不足は深刻です。
キャリア教育によって、子どもが地域の産業や職業に興味・関心をもつことは、後継者不足の解決につながり、伝統的な技術の継承も期待されています。
また、キャリア教育をきっかけに地域の魅力を再発見することもできます。

企業側にとってのキャリア教育を提供するメリット

キャリア教育を行うことは、企業に以下の4つのメリットを与えます。

次世代の育成

近年は少子化により、企業が優秀な人材を確保することが難しくなっています。
そこで、企業が学生に対してキャリア教育の提供を行うことで、実社会が求める人材像に近づけるよう学生達を育成することができます。
次世代を担う若者への教育は、企業の未来を支える社員の育成にもつながるはずです。
また、キャリア教育で携わった企業として、学生に「企業名」や「職種」を覚えてもらうことができます。
学生達が就活生になった時には、知っている憧れの企業として就活先の候補に入りやすいといったメリットもあります。

CSRの達成

CSR (企業の社会的責任)を果たす上で、教育的な社会貢献活動に取り組む企業は多くあります。
CSRの達成によって、消費者だけでなく、取引先からのイメージが良くなり、売り上げが上がる傾向にあるなど、今やCSRは企業のイメージ向上に欠かすことができません。
経団連の調査によると、東日本大震災をきっかけに社員が社会貢献活動に従事することが増え、制度の導入が各企業で進んだようです。
企業はキャリア教育を社会貢献活動として行うことで、地域の学校と関わりを増やすことができます。
学校に協力的な姿勢を見せることは、保護者や地域の方から信頼され、商品の消費やサービスの利用につながるかもしれません。

参考:社会貢献活動支出調査結果

社員のモチベーションアップ

企業がキャリア教育を行い、学校と携わることで、社内に新しい風を取り入れる効果があります。
キャリア教育の事後学習では、関わった子どもたちの感想を聞くことができます。
「仕事をしている姿がかっこよかった」
「自分もあんな風に働きたい」
子どもたちの率直な感想によって、社員の仕事へのモチベーションは上がることでしょう。
企業にとっては、社員の離職率を抑えられ、生産性を向上できるというメリットにつながります。

経済産業省から表彰されるチャンス

経済産業省では、「キャリア教育アワード」を実施し、優秀な取り組みを行った企業や団体を毎年表彰しています。
「大企業の部」「中小企業の部」に分かれて募集され、以下の4点を審査基準にして、取り組みが評価されます。

  • 継続性
  • 企画性
  • 教育効果
  • 普及性

令和5年度は応募数44件中9社が入賞しました。
入賞することで、全国からキャリア教育への取り組み方が注目され、知名度が増し、顧客からの信頼も厚くなります。

2024年からは新たに受賞ロゴが制定されました。
表彰された企業は経済産業省からのお墨付きを受けていることを、広報活動等で紹介することができます。

参考:経済産業省「キャリア教育アワード・キャリア教育推進連携表彰」

企業と連携したキャリア教育の注意点

学校と企業が連携したキャリア教育には、気を付けねばならない点があります。
子どもの関わるキャリア教育ならではの注意点を3つご紹介します。

商品のPRにならないように

授業の前に、授業の構成を打ち合わせしましょう。
本来、授業中に特定の企業の商品を取り上げて学習することはありません。
それは、判断力の未熟な子どもにとって授業の中で扱った商品は、「買ってみたい」「欲しい」という素直な購買意欲につながってしまうからです。
一つの企業の商品を授業で扱うことは、「キャリア教育の教材である」という前提があることで、特別に許されます。
商品の宣伝要素が強く出てしまうと、学校側が教育的にふさわしくないと判断する場合もあります。
企業と学校が、長く良い関係を築けるように、事前に打ち合わせで学校の方針をよく理解し、あくまで教材であることを忘れずに授業を行いましょう。

たくさんの職種と出会えるように

子どもによって職業への理解はさまざまです。
キャリア教育の中で関わった企業は、子どもの職業観の羅針盤となることでしょう。
ただし、たくさんある中の選択肢の一つであることを、理解させなければなりません。
選択肢が少ないと、子どもが自分に合った仕事を見つけられずに、苦しんでしまうことがあります。
たとえば、メーカーの中にも「営業」「製造」「企画」などさまざまな職業分野があることを伝え、
どの仕事にも苦労や充実感があることに気づかせましょう。

事前学習・事後学習にも関わるように

企業と連携したキャリア教育では、事前・事後の学習が不可欠です。
出前授業当日だけでなく、事前・事後学習を通じて学びの変遷を知ることで、キャリアに対する子どもの考え方の変容を見ることができます。
事前学習では、与えられたテーマを基に、子どもが主体的に調べたり、質問を考えたりすることで、企業との関わりに期待感や積極性をもたせることができます。
「質問を待っています」
「会えるのを楽しみにしています」
このようなメッセージが企業から送られてきたことを知るだけで、子どもたちの頑張りは変わってくることでしょう。
また事後学習では、企業へ感想や考えたことを発表したり、手紙を送ったりする活動があることでより学びを深めることができます。
伝えて終わりではなく、何を学んだのか確認することで、企業側は教育効果を感じることができるでしょう。
企業が関わったキャリア教育の学習内容全体を見ることで、次年度につなげる継続性や、企画性の見直しを図ることができます。

企業が提供するキャリア教育の具体例

企業が携わるキャリア教育には、大きく分けて3種類の授業パターンがあります。
ここでは、3つの異なる関わり方を具体的にご紹介します。

社員が学校に出向く出前授業

まずは、企業から学校に社員を派遣して授業を行う出前授業という形です。
学校と日程や内容を事前に調整した上で、1時間から2時間ほどの授業に参加します。
仕事の話をしたり、子どもからの質問に答えたり、子どもの考えたプランにアドバイスをしたりします。
子どもは、いつも過ごしている学校で話を聞くことができるため、安心して講師の話に耳を傾けることができます。
また、あまり緊張せずに授業を受けられるため、職業観や勤労についてのイメージを大きく膨らませることができます。

商品や教材・授業パッケージの提供

2つ目の授業パターンは、企業が企画・製造した教材を使って、学校の先生が授業をする形式です。
企業は、講師を派遣せずに済むため、このような形式での授業は裾野が広い傾向があります。
普段の授業では使わない目新しい教材があることで、仕事に対する興味や学習意欲を高めることができるでしょう。

学生の企業訪問や職業体験

3つ目は、実際に子どもが企業を訪問し、そこで話を聞いたり、体験したりする授業に協力する形式です。
企業にとっては、一部の従業員だけが子どもと関わるのではなく、多くの従業員が子どもの目に触れるため、やりがいや緊張感をもって仕事に取り組むことができます。
また子どもたちは、普段の学校とは違う企業ならではの雰囲気を感じたり、マナーに気を付けたりする経験ができます。

まとめ

今回は、企業のキャリア教育参入について、注目される理由やメリット、注意点を説明しました。
人生100年時代の到来に向けて、若者が働く意味を知り、地域の活性化や人材育成につながるキャリア教育は、今後もますます必要とされるでしょう。
企業側にもキャリア教育への参入は、次世代を育成、CSRを達成、社員のモチベーションアップ、経済産業省から認定されるチャンスがあるなどのメリットの多い事業です。
ただし、子どもには一方的なPRになりすぎないよう、事前学習や事後活動も含めて学校側と念入りに授業の打合せをしましょう。
企業にはたくさんの業種が関わっていることや、働くことの喜びを直接伝えていけると良いですね。

実際に行われている企業の携わったキャリア教育の実践は、どれも子どもにとって大きな刺激となるものばかりです。
出前授業どっとこむでは、企業が提供する授業パッケージを、【対象学年】×【目的】で検索することができます。
【こだわりの条件】で「キャリア教育」を選択しておけば、キャリア教育に対応した授業を行う企業がすぐに分かります。

これから企業とのキャリア教育を計画・実践しようとしている方は、まずは検索して企業に問い合わせてみましょう。

この記事を書いた人

出前授業どっとこむ編集部

本記事は、教育関係者向けに最新情報を発信する「出前授業どっとこむ編集部」が制作しました。教育トレンドや実践的な指導方法について、多くの先生方に役立つ情報を提供しています。

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